2020年10月29日
家族や親族を急に亡くなったら、悲しみの中、故人の残したものを整理する遺品整理を行わなくてはなりません。ただ、心の整理がつけられず、何から手をつければいいのかわからないという方も少なくないでしょう。また自分の死後、周囲に負担をかけたくないという思いから、終活の一環としての身辺整理として「生前整理」をお考えになるケースも増えています。家族や自分にもしもの事態があった場合、遺品、生前整理は避けて通れないものです。遺品、生前整理の手順や方法について、具体的にご紹介します。
準備しておくと焦らない遺品整理
遺品整理とは、家族や親族が亡くなった後、故人の持ち物や財産を片付け、整理することをいいます。単に不用品を処分するだけでなく、故人との思い出の品物を形見分けしたり、貴重品などの財産分与をしたりと作業内容は多岐にわたります。
形ある遺品の整理は、目に見える「もの」だけあって思いを整理するうえでも忘れることはないかもしれません。一方で意識せずに忘れてしまうのが、見えない遺品です。例えば故人の銀行口座やクレジットカード、キャッシュカードなどカード類、健康保険証など解約や返却の手続きです。
意外と知らない各種の解約手続き
人が亡くなった場合、故人の本籍地や親族など届け出した人の所在地の市区町村役所(場)に死亡届(死亡届書)として提出しなければなりません。届け出が受理され、その人が亡くなった証明となります。ただ、死亡届が役所などに受理されても、銀行など各種機関に連絡が行くことはありません。家族があらためてそれぞれの機関に死亡した事実を申請する必要があります。
以下に死亡後に手続きが必要な代表的なケースをご紹介します。なお、公共料金など地域や取り扱う会社によって手続き方法が異なる場合もありますので、直接のお問い合わせをおすすめします。
銀行
名義人の家族が亡くなった事実を申請すると、銀行は名義人の死亡を確認し口座凍結を行います。口座内に預金があれば、相続財産となりますから、財産の名義人が確定するまでの間、引き落としができなくなります。これは不要な遺産トラブルを避けるための対策です。
しかし、葬儀費用をはじめ、これまでの医療や介護にかかったお金が必要になります。その支払いが難しくなるうえ、光熱費やローンの引き落としなど毎月の必要経費の引き落としもできなくなるのです。遺産相続トラブル防止のためとはいえ、口座凍結は残された家族にとっての悩みの種となっていました。
2019年7月、法律が改正され、凍結された口座から一定額までは預貯金を引き出すことが可能になりました。仮払いの条件、また注意が必要な点は次のようなものです。
- 故人の預貯金額 × (相続人の)法定相続分×3分の1で、1つの口座につき150万円が上限
- 引き出した分は、一部遺産を相続したものと見なされ、相続放棄ができなくなる可能性も
- 他の相続人とトラブルになるため、他の相続人に事前に相談しておく
- 葬儀費用や故人の負債など、事情がある場合は領収書を保管しておく
手続きは銀行によって異なりますが、被相続人(故人)の戸籍謄本、相続人の本人確認書類、印鑑証明書が必要になる場合がほとんどです。
また凍結口座から自動的に引き落とされる料金などは、口座変更の手続きを行っておきましょう。
遺言書の有無によっても手続きは異なる
口座の凍結を解除するのは、相続手続きを終え、相続人が決まったときです。相続人が名義変更をするか、払い戻しをすることになります。法的拘束力のある遺言書があれば、相続人だという申請もスムーズです。
一方相続人が複数の場合、誰が相続するかを決めるために法定相続人となる全員の署名押印のある遺産分割協議書が必要となります。法定相続分の通りの遺産分割であれば、遺産分割協議書は不要です。金融機関や相続の状況によって手続きや必要書類が異なりますので、まずは確認が大切です。
クレジットカード、キャッシュカード
クレジットカードも、解約手続きを済ませなければ、年会費等が請求されます。また、公共料金や携帯電話の料金を自動引き落としにしていないかも確認し、引き落とし口座の変更、もともとの契約を解除す等の手続きをおこないます。
支払うべき残債がなければ、名義人のフルネームや生年月日、住所や暗証番号や名義人との関係を伝えるだけで解約できるケースがほとんどです。
ただ、故人のクレジットカードの残債があるケースでは少し複雑になります。故人の残債は、負の財産として相続する人が引き継ぐことになっているからです。故人の財産を相殺して支払える金額であれば、問題ありません。一方で多額の残債があったり、遺産が少なかったりと、事情によっては相続人が支払わなければならないケースも出てきます。
相続放棄も含め、相続の方針により手続きも異なりますので、こちらもクレジットカード会社に問い合わせてみましょう。
銀行など金融機関のキャッシュカードについては、銀行口座が凍結されると使用できなくなります。しかし実際は、名義人が亡くなっても凍結手続きがなされるまでは、暗証番号を知っていればお金を引き出すのは可能です。ただ、無用なトラブルを防ぐため、止めておくのが無難でしょう。
健康保険証
日本では国民皆保険制度が整備されており、国民すべてが等しく医療が受けられます。亡くなったら、加入していた保険に資格喪失届を提出し、保険証を返却する必要があります。保険の加入先によって手続きの問い合わせが異なりますので、注意が必要です。国民健康保険、後期高齢者医療制度の資格喪失手続は死亡日から14日以内に行う必要があります。
- 自営業者・年金生活者・非正規雇用者などの方→国民健康保険(基本的には市町村など自治体)
- 国家公務員、地方公務員等の方→共済組合
- 一般企業にお勤めの方→健康保険組合(大企業)、全国健康保険協会(中小企業)
- 75歳以上の方→後期高齢者医療制度
世帯主が亡くなり、配偶者や子供など家族が扶養されていた場合は、国民健康保険に加入する、他の家族の健康保険の扶養に切り替えるなどの手続きを取らなくてはなりません。
国民健康保険の被保険者が亡くなったときは、葬祭費などの支給があります。決めれた期限内に別途申請の必要がありますので、資格喪失届を提出と同時に手続きを行っておくといいでしょう。
マイナンバーカード
マイナンバーカードは、本人が亡くなっても返還の義務はありません。亡くなった後、税金や保険などを含めた相続の手続きに個人番号が必要なケースもあるので、しばらくは手元に置いておきましょう。希望すれば、市区町村役所(場)で引き取ってもらえます。
パスポート
パスポート(旅券)は、国外で国籍やその他の身分を証明する大事なものです。特に期限はありませんが、落ち着いたらできる限り早めに返納手続きを行いましょう。手続きは発給業務を手がけている各都道府県のパスポートセンターや旅券事務所などです。故人のパスポートの他、死亡が証明できる書類(戸籍謄本、住民票除票等)、届け出をする本人の身分証明書が必要となります。
年金手帳
亡くなると年金受給の権利も消滅しますから、受給権者死亡届(報告書)を提出する必要があります。
国民年金の受給者の場合、14日以内、厚生年金と共済年金は死亡日から10日以内に行うルールとなっています。添付書類や詳細は、年金事務所または街角の年金相談センターに問い合わせください。
なお、未支給年金と言われるもの亡くなった後に受け取っていない、亡くなった日より後に振込みされた年金においては亡くなった月の分までは遺族が受け取ります。受け取れるのは故人と生計を同じくしていた家族となっています。配偶者や子、父母など受け取れる家族の順位も決まっています。
故人が日本年金機構に個人番号(マイナンバー)に登録をしている場合は、届出の必要はありません。
公共料金(電気・ガス・水道)
使用を続けたいものに関しては名義変更、それ以外は解約手続きを行います。電気・ガスは契約している電力会社、水道は契約している地方自治体に問い合わせましょう。故人の名義で金融機関などから料金の引き落としをしていた際には、そちらも変更しなければなりません。
電話やWEB上の手続きで変更や解約が可能なことがほとんどですが、ガスに関しては立ち会いなどが必要なケースもありますので、早めに相談しておくとベターです。連絡する際は、お客様番号などがわかる書類(請求書、領収書)があるとスムーズです。
有価証券
株式など有価証券も故人の財産です。ただ評価額が変動するため、現金のようにシンプルに相続金額を定めるのが難しい部分はあります。また証券取引所を通じて広く取引されている上場株式か、個人や業者仲介のもとに取引される非上場株式によっても異なります。
まずは相続人を確定し、名義変更や現金化などの手続きを取ることになります。遺産分割協議書や遺言書などで相続人であることを証明しなくてはなりません。また上場株式であれば証券会社に問い合わせることになりますが、非上場株式では株式発行会社に問い合わせるなど、少し複雑になります。いずれにせよ、一度税理士や会計士など専門家に相談してみるといいでしょう。
不動産
故人が所有する不動産の登記名義人であれば、所有権の移転の登記を行う必要があります。こちらも相続人がどのように相続するかによって、手続き内容が異なります。戸籍謄本などをもとに法定相続人を確定、遺産分割協議書を作成します。遺言書が残されているケースでは、公証役場で作成した公正証書遺言であれば問題ありませんが、自筆証書遺言であれば家庭裁判所の検認が必要となります。
登録名義人が故人ではないケース、例えば故人の両親が当初の名義人で、名義変更をしていないこともあります。その場合、相続人の数も多くなり、手続きも煩雑になります。管轄の法務局や司法書士に相談するのがおすすめです。
貴金属、宝石など
故人との思い出が詰まった遺品の中には、価値のある貴金属や宝石なども含まれているかもしれません。
形見分けを行い、手元に残すものが決めたら、それ以外は売却することも可能です。故人が大切にしてきた品々ですから、きちんと見積もりを取ってくれる業者に依頼しましょう。
宝石などを相続後に売却した場合、1個または1組の価額が30万円超のものは課税対象となります。
また金やプラチナなど地金も課税対象となることを心に止めておきましょう。
事前にできることはしておきましょう
遺品整理は故人の思い出をしのび、気持ちに区切りをつける上でも欠かせないイベントの1つです。
一方で、突然のお別れで故人の意志がわからなかったり、遺品が多すぎて処分に困ったりと残された家族への負担にもなってしまいます。さらに価値ある貴重品が残されたら、相続など財産トラブルにつながるリスクもあります。
家族の負担や無用なトラブルを防ぐためにも、身辺を整理する「生前整理」をしておくのがおすすめします。
例えば不動産の名義変更等できる範囲で家族に意思表示することも大切です。自分の希望を伝えるためにも、早めの終活を意識してエンディングノートや遺言書をしたためておくのもいいでしょう。ただエンディングノートの内容には、法的拘束力がありませんので、注意が必要です。
財産や遺品にどんな内容があるのか、葬儀やお墓に関する事柄の他、パソコンやスマートフォンに残されたデジタル遺品、その暗証番号などもわかりやすく記しておきましょう。
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MAIDMANでは、有資格者である遺品整理士がご家族に寄り添い、最適な遺品整理の方法をご提案しています。また環境に配慮し、徹底的に分別・リユースを行い、費用面での負担軽減にも努めます。1ルームから一軒家まで、状況に応じた対応ができるのも強みです。加えて残された家族に迷惑をかけたくない、自分の意思を終活に反映させたいという思いにもお答えし、生前整理のご相談にも応じています。
税理士、司法書士、不動産会社や建物解体会社等など、MAIDMANでは対応が難しい内容でも、各分野の専門家と連携し、お客様のベストを探していきます。ぜひお気軽にご相談ください。
生前整理について解説した記事がございます。併せてご確認ください。